2つの場所に足を置く

「空スペースを活用して放課後の子どもたちが遊ぶ場所にして、その左隣を仕事帰りの親がキャラメルマキアート片手にチットチャットして一息つけるカフェにして、右隣をコミュニティ図書館にする」そんな素敵空間をつくるのは楽しいし、あったらいいなぁと思う。そんな「あったらいいなぁ」をつくって運営していくことが仕事になったら最高だと思う。


実際に仕事にしていくためには、こんなプロジェクトを運営していくための、お金の回り方について知恵を絞る必要がある。


一番わかりやすいのは、そんな素敵空間というサービスが提供されているのだから、利用者が対価を払うという方法。ロジックは明快でいいのだけれど、利用者が常時一定数いないと安定しないという、当たり前だけどなかなかに難しいハードルがある。アイデアを気に入ってくれた人が気軽に立ち寄れる場所であることが大事なのに、運営のためには規模を確保するための営業努力が必要になる。人口が減っていく社会で規模に依拠した仕組みはちょっとうまくない気がする。


別の方法としては、こんな素敵空間はみんなが楽しめるものだから、その公共性を認めて、地域住民が収めている税金から運営するという方法がある。実際にこういうタイプの補助は多い。でも利用しない人にとっては少し不公平感が残るようなところがあるし、「公共性を認める」プロセスはえらく時間がかかって、ようやくGOサインが出る頃にはアイデアを思いついたときのワクワク感が公共性を獲得するために費やす労力のせいで疲労感に変わってしまう。スピードが出せないというのがこの方法のネックかと思う。


でなければ、公共性の高いアイデアなので、財団を活用するという方法もある。アメリカのようにドネーションをする意識の高い社会では、ガッツリ稼いでいる会社や個人は公共的なメリットの高いプロジェクトに人件費を含めて使えるお金が潤滑にまわる。日本でも公共性は高いけれど企業活動ではカバーされにくいプロジェクトに資金が十分につけばいいなと思いつつ、現状ではそのような機会も少ないし、あっても人件費を出せるものは皆無(ではないだろうか、、、ちょっと言い切る自信ないけど)。


ここ近年の新しいお金の回り方として、クラウドファンドがある。これはプロジェクトのスタート時にはかなり有効な方法のようだ。一方で、そのあとの運営についても継続的にクラウドファンドで資金を調達し続けるのは、そもそもの仕組み上難しい。はじめるための資金を人と人のつながりを通じて集められる社会は良い社会だなぁと思う一方で、プロジェクトにとってより大事なのは、運営を継続させるためのお金だなぁとつくづく思う。


それじゃあどうするのか。ひとつはミックスアプローチで、先述の方法をあちこち混ぜて運営する。実際この方法で動かしていくことはできそうだけれど、事務コストが膨大なので、これを捌くスキルがないとけっこうしんどい。個々からの必要書類のリクエスト、お金の額、使える対象、accountabilityのところ諸々、情報を隅から隅まで把握していないとハンドリングできない。これをやりきる能力と熱意のある人だけが「こんなのがあったらいいなぁ」という素敵な思いつきを実現できる、というのは機会的平等はあるのかもしれないけれど、公平な社会なのかどうか分からない。うーん、、。


色々と素敵プロジェクトのお金の回し方について考えてみたけれど、今のところの結論としては、やっぱお金を安定的に稼ぐ仕組みを片方の軸として持っていて、同時並行でプロジェクトを実現する軸を持っている状態になる必要があるのだと思う。プロジェクト実現のための諸々の事務コストがアイデアを思いついたときのワクワク感を押しつぶしてしまっては、何をやっていても楽しくなくなってしまうだろうなぁと思う。消極的な選択かもしれないが、実際に取り組んでいていちばん楽しめる立て付けは、今思いつく範囲だとこの方法のような気がしている。


さて、この主軸でお金を安定的に稼ぐ仕組みは人や組織によって様々だろうけれど、ひとつ大事な特徴かなと思ったのが、「2つの場所に足を置く」かなと考えている。自分の場合は、心躍るワクワクプロジェクトは自分の想像力が届きやすいある場所の文脈で思いつく。そして実際の活動もその場所を舞台に起きる。けれど、それを実施するための活動費や日々の生活を支えているものは、また別の場所で得ている。どちらの場所に軸足を置くのかはその時々で違ってくるのだろうけれど、2つの場所に足が届いていているということが、両方の場に関わる上で大事なポイントになっていると思う。


2つの場所に置いた足のどっちを軸足にするのか、その時々に合わせて切り替えられるようになると、いつもプレイフルな気持ちで心躍るワクワクプロジェクトを運営できるようになる気がする。


(書き手:クドウ)









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